世界文学会

Society of World Literature JAPAN

日本学術会議法改正の再考を求める

2023年2月2日

2022年12月6日、内閣府は『日本学術会議の在り方についての政府方針』(以下、『政府方針』と略)を公表した。これに対して、12月21日、日本学術会議は総会において政府方針の再考を求める声明を発出した。

 今回出された『政府方針』については、手続きと内容の両面について問題がある。

1. 手続きについての問題点
2021年4月22日、学術会議が自主的改革案『日本学術会議のより良い役割発揮に向けて』を公表したにもかわらず、その後内閣府など関係機関が学術会議と十分な話し合いをしないままで、1年半以上も経過した後に『政府方針』が出された。

2. 内容についての問題点
学術会議の声明に明記されているように6点ある。とりわけ、会員選考のプロセスに第三者委員会を関与させることについては、学問的視点ではなく、政府など外部の意向で恣意的に会員が決められるのではないか、という大きな懸念がある。
 ここ3年余のコロナ対策で焦点となったのは、政治と科学の関係である。国民が政府の政策に不信感を持つ局面が何度もあったが、いずれも政府が専門家である科学者の意見を十分に尊重していないのではないか、という疑いが原因であった。大地震、気候危機、原発事故、感染症とこのところ日本社会はこれまで経験したことのない厳しい状況に直面している。少子高齢化問題もその一部であろう。このような危機の時代だからこそ、政府が科学者の専門的知見に謙虚に耳を傾けなければならない。逆に言えば、政府に都合のよい助言しかしない科学者は専門家の名前に値しないだろう。科学者の国会とも称される学術会議が高い独立性を保ってこそ、日本や日本国民にとって信頼に値する組織であり続けられるのである。

 以上のような理由で、『政府方針』を撤回し、これから学術会議と信頼関係に基づく話し合いを重ねることを強く求める。

世界文学会

会長  鷲山 恭彦

TOP