2020年度 第1回連続研究会のおしらせ
2019年12月14日（土） 14:00～18:00 東海大学 高輪キャンパス4号館
懇親会 18:30-20:30
「 尊厳、多重主体主義、日韓関係」 小倉紀蔵
日韓関係が悪化しており、修復の兆しが見えない。両国間の摩擦と対立は、どこに淵源があるのか。数多くの分析が可能であろう。ここでは、両国社会における「人間観」の違いという観点から、問題提起をしたい。その際、主に歴史認識問題に焦点をしぼって語ってみる。
歴史を生きる人間とはなにか。そしてその人間にとって、尊厳とはなにか。そもそも「歴史」を「生きる」とはどういうことか。
歴史に痛めつけられた人の尊厳を、どのように扱えばよいのか。その場合、「歴史」といわれているものはいったいなにか。
歴史に痛めつけられたひとの尊厳を回復する過程で、逆に痛めつけた側のひとの尊厳が踏みにじられた、とそのひとたち（痛めつけた側の人たち）が感じた場合には、尊厳をどのように考えればよいのか。
おそらく、これまでの人間観を変える作業をしないと、これらの問いには答えられないであろう。ここでは、多重主体主義という考え方を提示して、なんらかの生産的な議論をしてみたい。文学の役割についても議論されるだろう。
『朝鮮思想全史』、小倉紀蔵、ちくま新書、2017年。
2) 「ウイグルの現代詩とその詩人たちの光と陰 」 ムカイダイス
ウイグルの現代詩とは、ウイグル古来のアルーズ格律（aruz wezni）で書かれた定型詩の韻律方式と異なり、自由な韻律で書かれた詩のことを言う。ウイグルの現代詩人たちは、伝統的な詩作技法に熟達し、古典文学の素養と現代的感性が高いレベルで求められ、これをクリアした者だけが、自由韻律詩を書くことが許されることが暗黙のルールである。
文学誌『テンリタッグ』の1986年号に掲載された、アフメットジャン・オスマン氏の「夢」など一連の詩でもってウイグル現代詩の歴史は幕が開け、彼の後を継いだ若きタヒル・ハムット、ペルハト・トルソン、グリ二サ・イミン、ゴジャ・ムハッメド氏らが率いる数多くの新鋭詩人たちがウイグル現代詩の一時代を築いた。今回は、ウイグル現代詩の成立過程に影響を与えた内外的要素をまとめることを試みる。そしてウイグル現代詩を代表する5人の詩人の作品を日本語で読み、今や話題にもなっているウイグルの政治状況が彼らの作品と人生に与えた影響について考える。
『ウイグル新鋭詩人 選詩集 芽生えはじめる言葉たち』、ムカイダイス、河合眞 訳、左右社、2017年。
2) 「日本の経済政策論と政治状況」 松尾 匡
去年から、いろいろな経済指標が低下を続けています。景気は後退期に入った可能性が高く、10月7日に発表された8月の景気動向指数の基調判断は、４カ月ぶりに「悪化」に引き下げられました。そんな中で、10月1日にはとうとう消費税が10%に引き上げられています。
政府はポイント還元制度や東京オリンピックの特需で景気の悪化を防ぐつもりのようです。しかし来夏両者はほぼ同時に終わります。そのあと、土砂降りのデフレ不況が再来する可能性は目下濃厚です。人々の間で、消費税増税への怨嗟と、大規模な景気対策を求める願望が高まるでしょう。
次の総選挙は、このような不況の中か、あるいはこうした不況に向かう危機感が世論を覆う中で行われることになります。
政府与党は多少の景気対策を打ち出して臨むことになるでしょう。他方、維新の会は今、緊縮イメージの払拭にやっきで、国民民主党の一部を巻き込んで反緊縮政策を掲げる新党を打ち出す可能性があります。左派・リベラル派の野党はこれにどう対抗していくのでしょうか。
『左派・リベラル派が勝つための経済政策作戦会議』、松尾匡、青灯社、2019年。
開開催日時：2019年12月14日（土）14:00～18:00
開催場所： 開催場所: 東海大学高輪キャンパス4号館（4306教室）
〒108-8619 東京都港区高輪２-３-23 電話03-3441-1171（代表）
世界文学会では、統一テーマのもと、12月から翌年の7月にかけて連続研究会を4回行っています。ご関心のある方は、会員外の方でもどうぞご自由にご参加ください。会員外の方には資料代として500円を承ります。
東海大学高輪キャンパスへの交通アクセス詳細
東京メトロ南北線・都営地下鉄三田線「白金高輪」駅下車、出口 1 から、徒歩約 8 分。
都営地下鉄浅草線「泉岳寺」駅下車、A2 出口より徒歩約 10 分。
JR・京浜急行「品川」駅下車、高輪口より徒歩約 18 分(田町方面に進み、交差点を左折)。
JR・京浜急行「品川」駅下車、高輪口より都バス「目黒駅行」、「高輪警察署前」下車、徒歩約 3 分。
