世界文学会

Society of World Literature JAPAN

2023年度 第三回連続研究会のお知らせ

2023年度 連続研究会「戦争を問う」
第三回研究会  6月17日(土) 14:00-17:00

早崎 えりな 「戦争と音楽・・・・第二次世界大戦下のドイツと日本」
山室 信高 「二つの世界大戦と世界文学――トーマス・マンの『魔の山』と『ファウストゥス博士』」

参加希望者は、以下のリンクのフォームからお申込みください。Online参加方法を折り返し連絡します。
また、対面での会場も設け、登壇者とスタッフと運営委員らが対面会場から参加しますが、会場の都合上、オンラインでのご参加をお願いしております。対面での参加を強くご希望の場合には、以下のリンクのフォームからご連絡ください。

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<発表要旨>

早崎 えりな 「戦争と音楽・・・・第二次世界大戦下のドイツと日本」

 ナチス政権下のドイツでは1933年末、国民啓蒙宣伝大臣ゲッベルスのもとに「帝国文化院」が組織され、その下部組織として全国の音楽活動を統制する「帝国音楽院」が創設される。これにならって、日本では1941年に情報局と文部省の管轄において「日本音楽文化協会」が組織され、当時の著名な音楽関係者のほとんどがメンバーとなる。その活動目的は「音楽による国民精神の昂揚並びに情操の滋養」「国家的公共的行事に対する協力」であった。
 本発表では、戦時体制下の日本とドイツの音楽界の状況を概観し、「帝国音楽院」の初代総裁リヒャルト・シュトラウスと、「日本音楽文化協会」の実質上のトップで創立直後の副総裁山田耕筰、さらには、1931年東京音楽学校教師として来日し、敵性外国人として抑留され終戦を東京で迎えたユダヤ系ドイツ人クラウス・プリングスハイム(トーマス・マンの妻カチアの双子の兄)、この三人の戦時体制下の活動についてとりあげる。


山室 信高 「二つの世界大戦と世界文学――トーマス・マンの『魔の山』と『ファウストゥス博士』」

 80年の生涯を送ったトーマス・マン(1875-1955)は、その前半生は普仏戦争後の「平和」な時代、そして後半生は第一次および第二次世界大戦という未曾有の戦争(総力戦)の時代を生き、書いた作家である。
 本発表では本来あいまいで捉えがたい「時代」というものが集約的に前景化する戦争という出来事に注目して、マンの後半生を代表する二つの長篇小説である『魔の山』(1924)と『ファウストゥス博士』(1947)をあらためて読み解きたい。『魔の山』はマンが第一次大戦をはさんで書き継いだばかりでなく、主人公の青年ハンス・カストルプが7年の高山サナトリウム滞在の後に世界大戦へ参戦する場面で幕を閉じる。また『ファウストゥス博士』は第二次大戦中に亡命先のアメリカで書き始められたが、副題(「一人の友人によって語られたドイツの作曲家アドリアン・レーヴァーキューンの生涯」)にあるとおり、語り手であるゼレヌス・ツァイトブロームが第二次大戦のさなか空爆の危険に曝されつつ、ナチスドイツの暴挙を見据えながら綴った伝記という体裁をとっている。どちらの小説においても、戦争は執筆の背景を成しているとともに、物語の主要なモチーフにもなっている。まずは文学研究の基本に則り、二つの小説の中で世界大戦がいかに描かれ、語られているのかを比較検討する。その上で、単に是か非かでは割り切れない戦争の文学的意義を考えたい。

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