世界文学会

Society of World Literature JAPAN

2021年度第3回連続研究会のお知らせ

2021年度 連続研究会: 「崩壊と世界文学」

第三回研究会   6月19日(土)  14:00 ~17:00

  1. 村山木之実 「伝統の崩壊とイランの知識人シャリーアティーの文学」

2. 宇野木めぐみ 「18 世紀フランス小説と美徳の崩壊、作家の戦略」

研究会はOnlineで行います。

参加希望者は、世界文学会事務局宛の問い合わせフォームで、「第三回連続研究会参加希望」と書いて、ご連絡ください。Online参加方法を折り返し連絡いたします。
なお、会員以外の希望者は、お名前とEメール・アドレスの他、所属、専門分野(関心領域)を書き添えてください。

<発表要旨>
村山木之実 「伝統の崩壊とイランの知識人シャリーアティーの文学」
本発表では、20世紀イランを代表する知識⼈の⼀⼈であるアリー・シャリーアティー(1933-1977)による文学作品『祈り』(Niyāyesh)に焦点をあてる。この作品の分析を通じて、フランスの生理学者、外科医、思想家として知られるアレクシス・カレル(1873­–1944)の『祈り』(1944)に影響を受けて書かれたこの作品が、散文体で書かれ、そこにシャリーアティー独自のイスラームが提示されているという点で、イランにおける文学と宗教の伝統を突き崩したことを明らかにする。シャリーアティーは、1979年のイラン革命の立役者として一躍脚光を浴びた知識人である。そのため、シャリーアティーの著作は、彼を革命のイデオローグとしてみた思想研究の観点から分析される傾向にあったが、近年になり、革命の評価とは距離を置いた形で、シャリーアティーの思想を評価する動きがみられるようになった。この新しい潮流において注目されるようになったのが、シャリーアティーの文学作品である。しかし、フランスに留学経験のあるシャリーアティーが、そこで学び得たヨーロッパの思想を自身の文学作品にいかに反映させているのかについては、未だ議論の余地がある。本発表の検討によって、革命後のイランの現代文学状況も提示することも可能になる。

宇野木めぐみ 「18 世紀フランス小説と美徳の崩壊、作家の戦略」
18世紀のフランス小説の序文には、強迫的なほどに工夫が凝らされている。その理由の一つは、旧体制下において、小説は美徳を損なう有害な存在と見なされてきたことであろう。小説バッシングへの対抗手段の一つとして、作家は序文を練り上げざるを得なかったのではないだろうか。
18世紀は小説有害視の時代であると同時に、小説勃興の時代でもあった。その背景には、識字率の上昇、新しい読者層の出現、読書クラブなど書物への接近システムの成立が挙げられる。
発表では、とりわけ女性の美徳にとって小説が有害視されていたことを、絵画、女子教育論、啓蒙的医学書などから明らかにする。
そのうえで、小説の序文を、作家の戦略の一つとして読み解く。18世紀前半からは、ルサージュ『びっこの悪魔』、シャール『ドン・キホーテ続編』、プレヴォー『マノン・レスコー』、マリヴォー『マリアンヌの生涯』の4作品の序文を、世紀後半からはルソー『新エロイーズ』、ラクロ『危険な関係』、ベルナルダン・ド・サン=ピエール『ポールとヴィルジニー』の各序文を取り上げ、作家たちの戦略的な言説として解釈を試みる。
『読書する女たち-18世紀フランス文学から』、宇野木めぐみ、藤原書店、2017年。

 

TOP