世界文学会

Society of World Literature JAPAN

2021年度第4回連続研究会のお知らせ

2021年度 連続研究会: 「崩壊と世界文学」

第四回研究会   7月17日(土)  15:00 ~18:00

  1. 黒田昭信 「旧都崩壊 ―日本精神史における歴史認識の転換点としての近江荒都歌―」

2. 高橋宗五 「近代の終焉とその崩壊 ―ルカーチ、ベンヤミン、ブレヒトとその後―」

研究会はOnlineで行います。

参加希望者は、世界文学会事務局宛の問い合わせフォームで、「第四回連続研究会参加希望」と書いて、ご連絡ください。Online参加方法を折り返し連絡いたします。
なお、会員以外の希望者は、お名前とEメール・アドレスの他、所属、専門分野(関心領域)を書き添えてください。

〈発表要旨〉

黒田昭信 「旧都崩壊 ―日本精神史における歴史認識の転回点としての近江荒都歌―」
柿本人麻呂の近江荒都歌三首(『万葉集』巻第一・二九-三一)の長歌の前半部には天皇の神話的系譜が、後半部には崩壊した旧都近江宮の現実の廃墟が表現されている。それぞれ原初へ回帰する神話的時間と現実における流れ去る時間とに対応している。そして、神話的時間と流れ去る時間との対立の中において、後者に対する人麻呂の深い歎きが発せられる。それは反歌において一層鋭く響いている。まず長歌において、神話世界と歴史的現実とが対比され、反歌において後者の不可逆性と過去の決定的喪失が強調される。このような神話と歴史の対立的認識と歴史的時間の不可逆性の自覚とが、人麻呂を日本の精神史における歴史認識の重要な転回点に立たせている。この三首は、「荒れたる都」の魂鎮めのために読まれたに違いなく、その背景には羇旅信仰があった。しかし、これらの歌、特に反歌二首には、それを逸脱して奔逸する深い感情が詠まれている。かつての大宮人たちを想起するにとどまらず、それらの人たちとの再会の不可能性を詠う第二反歌は、「冷酷な時間の流れにきざまれる人間の悲痛に充ちており、この肉声には、根源の魂振り思想からの逸脱がある」(伊藤博『萬葉集釋注』)。

高橋宗五 「近代の終焉とその崩壊 ―ルカーチ、ベンヤミン、ブレヒトとその後―」
この発表は、ホメーロスの叙事詩から始まる西洋文学史をひとつの全体と観て、歴史哲学に基づく優れたジャンル論を展開したルカーチの『小説の理論』とベンヤミンの『ドイツ近代悲劇の根源』を批判的に検討する。そしてその問題点を明らかにし彼らの理論を修正したものを近代文学に応用し、特に近代の戯曲・演劇の孕む問題点を検討し、近代文学が終わったことを、ひいては近代そのものが終わり、既に崩壊し、新たな模索の時代に入ったことを明らかにしたい。

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