世界文学会

Society of World Literature JAPAN

2022年度 第2回連続研究会のお知らせ  

2022年度 連続研究会「疫病と世界文学」

第二回研究会 4月23日(土)14:00-17:00

  1. 宮丸裕二 「ディケンズ『荒涼館』に見る感染症」
  2. 杉山秀子 「ドストエフスキーの『罪と罰』にみられるパンデミックとジェンダーの表像」

研究会はOnline で行います。

参加希望者は、世界文学会事務局宛の問い合わせフォームで、「第二回連続研究会参加希望」と書いて、ご連絡ください。Online参加方法を折り返し連絡します。
なお、会員以外の希望者は、お名前とEメール・アドレスの他、所属、専門分野(関心領域)を書き添えてください。

 <発表要旨>

宮丸裕二 「ディケンズ『荒涼館』に見る感染症」

 チャールズ・ディケンズ(Charles Dickens; 1812–70)が著した長編小説『荒涼館』(Bleak House; 1852–53)には、他の小説作品とは異なり、いく種類かの感染症が登場している。なかでも天然痘については、ヒロインの容貌が感染後に完全に変わってしまうという、センセーショナルにして、当時の文学世界の約束事を破るという冒険をしている。同時に本小説には画期的な特徴がいくつも見られ、膨大な量の登場人物が登場することとその人物が所属するいくつもの異なる社会集団が描かれること、推理小説(探偵小説)が定着する以前ながら推理小説を試みる要素があること、小説の語り手が複数におよぶという実験があること、法の制度に見られる停滞と理不尽とを正面から揶揄し非難していることなど、様々な題材を一つの作品におさめている。こうしたものの一つとして、ディケンズが当時のイギリスではすでにほぼ撲滅が完了していた天然痘を題材として扱ったことにはどのような意味があったのかについて、考えてみたい。

杉山秀子 「ドストエフスキーの『罪と罰』にみられるパンデミックとジェンダーの表像」

 昨年ドストエフスキー生誕200年祭がロシアで大々的に行われた。なぜロシアのみならず、世界でドストエフスキーがかくも人々の心に深くきざまれているのかというと、彼の人間観察とその分析が実に深いものを我々に提示していることがわかることからいえるのである。人間観察の分析の深さとそれによる作家の提示は『カラマーゾフの兄弟』によってさらに深く、内在する矛盾がさらに広汎に分析されていて、それは瞠目に値することは言うまでもない。本報告では、パンデミックとジェンダーのありようをドストエフスキーが当時どのように取り上げて、どのように分析し、何を我々人間に提示していきたかったを分析してみる。また、その命題はこの21世紀の時代とどのように呼応し、究極的には現代人に何を語りかけてどのような余韻を残しているのかを探求し、今後の人類の命運をドストエーフスキーの予知、予告の言葉に絡ませながら考察していきたい。

TOP