世界文学会

Society of World Literature JAPAN

2023年度 第一回連続研究会「戦争を問う」のお知らせ

2023年度 連続研究会「戦争を問う」
第1回研究会  12月17日(土) 14:00-17:00

中山弘明 「第一次世界大戦は終わったか?ーーレマルク『西部戦線異状なし』の日本における受容
姫本由美子 「日本軍政下ジャワにおいてどのような期待すべき「国民」像が文学にいかに描かれたか」

研究会はOnline で行います。

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<発表要旨>

中山弘明 「第一次世界大戦は終わったか?ーーレマルク『西部戦線異状なし』の日本における受容

エーリッヒ・レマルク作『西部戦線異状なし』(1928)は、ルイス・マイルストン監督の著名な映画(1930)以来、所謂「反戦小説」というくくりの中で論じられて来た。しかしこの作品が受容された時代は、むしろ世界的な「モダニズム」の全盛期であったことは注意を要する。日本でも本作は大きなブームとなったが、梶井基次郎は「ダダイズム」や「チャップリン」を引き合いに出して論じているし、大岡昇平のような戦後作家の戦争認識への影響も軽視できない。ここではまず本作を翻訳したのが秦豊吉という、帝劇のボードヴィル、レビューの草分けであった事実からはじめ、さらにこの作品の日本における受容の一つが演劇であったことに留意したい。1929年の高田保演出による新築地劇団、同年の村山知義演出による劇団築地小劇場による競作がそれである。舞台の上で上演された〈世界戦争〉とはどのようなものであったのか。いくつかの視点をあげておくと、映画を舞台上に並行して流す「連鎖劇」の手法、レビュー的な「見せる芝居」であったこと、さらには当時の検閲の問題などが留意される。それらを踏まえて、文学/演劇が世界戦争をどのように表象したか、また時代のメディアと戦争との関わりを論じる。   

姫本由美子 「日本軍政下ジャワにおいてどのような期待すべき「国民」像が文学にいかに描かれたか」

オランダの植民地であったインドネシアは、1941年12月8日に英米へ宣戦布告した日本によってほぼ翌年3月初旬までに占領され1945年8月まで軍政下に置かれた。「大東亜戦争」と命名された同戦争に勝利し、日本を指導者とする「大東亜共栄圏」建設には、インドネシアの資源獲得と住民動員が必要であり、そのための文化政策を実施した。
インドネシアの政治等の中心であったジャワでは、大宅壮一や武田麟太郎等の日本軍に徴用された文化人と、オランダ時代から「インドネシア的なるもの」を模索していたインドネシア人文化人が占領軍による言論統制の中で軍政の文化政策を担わされた。
本報告では、彼ら双方の活動を明らかにすることを通して、それが現地の文学者たちをして日本軍政による検閲等をかいくぐって「日本のプロパガンダのため」を「インドネシア社会のため」へと置き換えて作品を創作することを一定程度可能にしたことを示す。そして彼らが文学作品、特に戯曲の中にインドネシア「国民」像、すなわち西欧の文化も含めた多様な文化の影響を歴史的に受けて形成されてきた「インドネシア的なるもの」を「国民」文化として受け入れる華人や欧亜混血人をも包摂したインドネシアの全住民、を描いていったことを明らかにする。

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