世界文学会

Society of World Literature JAPAN

「戦後70年と世界文学」のお知らせ

戦後70年の文学を各国の文学スペシャリストが様々な思いを込めて研究発表いたします。会場からの忌憚のないご意見も伺いたいものです。皆さま、奮ってご参加ください。

第一回 2015年12月19日(土)

1 黒古一夫「大江健三郎と戦後70年」
大江健三郎の文学が「世界」から評価される理由は、『個人的な体験』(64年)から現在まで続く「弱者(障害者)との共生」という「私的」なテーマと、『ヒロシマ・ノート』(65年)以降これまた現在まで続く「反核」という「公=世界大」のテーマを両輪とする作品の底部に日本特有の「民俗」的世界を潜ませ、なおかつ「文学」が「社会」や「歴史と深い関係にあることを、その実作渡航道で示し続けているところにある、と私は思っている。
 
2 杵淵博樹「G.グラスと戦後文学」
「服従を拒む美徳」を今こそ
ギュンター・グラスの原点は、広い意味での戦争体験である。軍国少年だった彼は17歳で従軍し、負傷し、捕虜となった。敗戦後の1950年代、復興の一方、ナチズムの罪は隠された。その欺瞞への憤りと、表現への激しい衝動が、グラスの初期作品を生み出したのである。その後のグラスは、アンガージュマンを重視しながらもけして政治屋にならず、飽くまでも小説作家として、職人的な仕事ぶりを貫く。本講演では、グラスが作品を通して「終わらない戦後」とどう向き合ってきたかを考えてみたい。

第二回 2016年4月23日(土)

塩旗伸一郎 70年代の中国文学 「抗日戦争を問いなおす中国文学」
戦後70周年「安倍談話」は「侵略であろうとなかろうと」戦争一般を否定し、今後は謝罪でなく感謝で和解をめざしつつ、米国への軍事協力で平和に貢献すると表明した。対抗して中国が抗日戦争の歴史的意義を強調したのは当然だが、称讃だけでは「あらゆる戦争」に対する抵抗力とはなりえない。
 すぐれた戦争文学の伝統をもつ中国文学は、近現代史の「栄光」部分である抗日戦争の負の側面に光を当て、正統史観を問う作品をも生みだしている。その一端を紹介したい。

第三回 2016年6月18日(土)

北見秀司「サルトルと戦後」
サルトルは晩年、第二次世界大戦によって自分は自分と社会との絆を学んだ、と述べている。ではその絆とは何だったのか。これをまず、当時書かれたエッセイから読み取り、それが戦後のサルトル哲学とりわけ彼の疎外-物象化論ならびにそれを乗り越えるためのヒューマニズム・倫理にどう発展していくのかを論じたい。彼が求める民主主義は資本主義でもソ連型社会主義でもない、底辺に直接民主主義が存在する、コミュニティに根ざした、かつ外に開かれた民主主義だった。さらにヒューマニズムに文学がどう貢献しうるとサルトルは考えたのか、このことも合わせて論じたい。

第四回 2016年7月23日(土)

1原基晶「イタリア文学の戦後」(仮題)
2大木昭男「ロシア農村派文学と戦後」

「特別企画」として、2017年の夏目漱石生誕150周年に向けて「夏目漱石とロシア文学」~ドストエーフスキイとトルストイ~と題してシンポジウムが世界文学会主催で他の研究団体と協賛してできないかという提案が運営委員長からなされ、審議の結果、英文学や中国文学との関わりもあるので幅広く検討することに決まった。

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